《SEPTEMBER/2005》
また酒が切れた。俺の大好きなマイフェイバリットのラムが。しかしカナダっちゅう国は酒が高い。マイヤーズラム(750ml)一本21ドル+TAX14%。(現在猛烈なカナダドル高のため、1ドル95円)
横浜に住んでた時はJR桜木町と京急日の出町の中間ぐらいにあるト○スで1200円+TAX5%で買えたのに・・・。
ガソリンを入れなければ車は単なる鉄の塊り。酒を飲まなければ俺は単なる細胞の塊り。
ということで泣く泣く、仕方なく、本当はいらないんだけど、酒を買いに行く。
カナダという国は酒に関しては本当に厳しい。
公園など、外での飲酒は基本的に違法だし、バーなどで未成年に酒を飲ませると店のオーナーが厳しく罰せられる。その辺の酒屋で酒を買う際にも「IDを見せろ」と言われることが多々ある。
しかし、カナダという国はまた、店員によって「見せろ」と言う奴もいれば、笑顔で「ハ〜イ」なんて言ってIDの”ア”の字も出ず、しまいにゃ「Have
a good day!」なんつって心地よく送り出してくれる奴もいる。
俺はまだ免許をカナダの免許に変更しておらず、西暦が認識できるIDは財布に入らない大きさの、ダンボールみたいの でできた国際免許かパスポートになる。そして大抵はそれらを家に忘れる。(あまり持ってくつもりもないが)
そしてこの日もIDなんぞ持たずに酒屋に行った。運が悪いことにレジで中年のおばちゃん店員に「IDを見せろ」と言われた。どこの国でも中年のおばちゃんは怖いし厳しい。
酒屋から家までは歩いて5分の距離なのだが、今からいったん帰ってIDを持って酒屋に来て、また帰ると15分+αかかる。ここで意地でも買って帰れば、5分で済む。ということは10分+αも削減できる。と俺のスーパー脳みそがはじき出した。(本当は単にめんどくさいだけなのだが)
そこで財布に入っている平成18年の誕生日まで有効の免許証を取り出す。当然、西暦は書いてない。
するとおばちゃんが「これじゃあたしは分からないじゃないの。」と言う。
俺 「いや、これしか持ってないんだよね。」
おばちゃん 「そんなのダメよ。いい?カナダはお酒には厳しいのよ。こっちに来て間もないの?酒屋に来る時にはちゃんとあたし達に分かるIDを持ってこないとだめよ。」
俺 「そうなの?知らなかったよ。じゃあ次からは持ってくるから今日は勘弁してよ。」
おばちゃん 「それはできないわ。法律で決まってんだから。」
・・・このババア、やるじゃねえか。しかしここで引き下がるわけにはいかねえ。
俺 「分かった。じゃあ説明するよ。いいかい?ここに書いてある50って数字あるでしょ。これは日本の年で1975年なんだよね。それでもってその横に7月・・・。」
おばちゃん 「ちょっと待って、あなた今何歳なの?」
俺 「30歳。」
おばちゃん 「分かったわ。いいわ。でも次からはちゃんとID持って来るのよ。」
・・・勝った!やり遂げた!ありがとうおばちゃん!
でもこのやりとりで5分+αぐらい使っちまったよ。
その後何度もその酒屋に行ってるが、カナダ人に分かる
IDを持って行くことはまずない。
《OCTOBER/2005》
ある日の午後、携帯が鳴る。アドレス帳にはない番号だ。とりあえず出る。
俺 「ハロー。」
カナダ人男性A 「ハイ!ジミー!今何やってんだ?」
俺 「あのー、番号間違ってますけど。」
カナダ人男性A 「えっ?オオー、スイマセン。」
(ちゃんと確認してね。)
ある日の朝9:00頃、携帯が鳴る。アドレス帳にはない番号だ。とりあえず出る。
俺 「ハロー。」
カナダ人男性B 「ヘイ!キャサリン!今何やってんだ?」
俺 「あのー、番号間違ってますけど。」
カナダ人男性B 「オー!シット!」 プツ・・・ツーツー。
(第一声の「ハロー。」で気付け!どう間違っても俺の声はキャサリンじゃねえだろ!しかも謝れ!)
ある晩の睡眠中、携帯が鳴る。アドレス帳にはない番号だ。とりあえず出る。
俺 「ハロー。」
カナダ人女性A 「グッドナイト。」 プツ・・・ツーツー。
俺 「・・・・・・・・・・・・・・。」
(携帯の液晶の時計がAM5:00だ。せめて「グッドモーニング。」と言ってくれ。)
さて、10月に入り、最高気温は15度以下。晴れる日も減り、木の葉も真っ赤に色づいてきた。
・・・と言いたいとこだが実際は木の葉もすでに散り始めている。カナダの辞書には”autumn”と” fall”はないらしい。
寒くて天気も悪ければ、当然ローラーブレードどころではない。そろそろ冬に向けての準備をせねば。
カナダといえばウィンタースポーツ。しかも世界最大級のスキーリゾート”ウィスラー”はバンクーバーから近い。
そう、あれはまだカナダではバナナで釘が打てると思っていた中学生の頃。
当時テレビ東京で深夜にやってた”スキーナウ”を毎週欠かさずビデオにとり、クリス・ペプラーの声が夢に出るほど見ていた俺は、その中でウィスラーが紹介されてるのを見て「いつか行ってやる。」と強く心に誓ったのだ。
それから十数年の月日が過ぎ、やっとそのチャンスがめぐってきた。
まあ、心に誓ってから十数年も経ってしまっているということは、大した誓いでもなかったのかもしれないが。
基本的にスキーもスノーボードもそこそこできる俺としては、両方ともばっちり一流の道具を揃えて『優雅なカナダライフ』を知人、友人に見せつけてやりたいとこだが、毎日のように白米を炊いて韓国人ルームメイトのキムチで食ってる俺にそんな金があるわけない。むしろ『粗野なカナダライフ』を知人、友人に見せたくないのが本音なのである。
まあそれはさておき、とにかくスキーよりも安上がりなスノーボードを買うことに。
あるショップでシーズン前最後のスノーボードセールがあると聞き、早速行ってみる。
・・・安い!!
SALOMONの結構クオリティの高い板、定価550ドル(恐らくこれだけでも日本より安い)がセールで330ドル。
BURTONの結構クオリティの高いバインディング、定価150ドル(しつこいようだが恐らくこれだけでも日本より安い)がセールで75ドル。
他の客に取られる前に即決し、キャッシャーに向かう。キャッシャーのおねえちゃんがバーコードを読み、TAX込みのボタンを押す。
出ました!会計金額しめて302ドル!
「へ〜、TAX込みで302ドルかぁ。ま、カナダはTAX高いから な・・・。」・・・ってさらに安くなってるじゃねえか!!
出ました。これぞCanadian Wonderful Wonder!
カナダでは330ドルと75ドルを足して14%のTAXを含めると302ドルになるらしい。最高!
日本で使ってたサビサビ、ボロボロの板を実家の倉庫にこっそり捨てて来て正解だった。
Good dealに気を良くした俺は自分の部屋に戻り、早速板にバインディングを取り付け、日本で愛用していたブーツを履き、板に乗ってみる。「ぱーふぇくとぉ!」
これであとは・・・雪求ム。
《NOEMBER/2005》
北米四大スポーツといえば、NBA(バスケ)、MLB(野球)、NFL(アメフト)、NHL(アイスホッケー)である。
まあ、北米っつってもアメリカとカナダだけだし、しかも超大国アメリカがほとんど牛耳ってるので、カナダのチームはNBAのトロントラプターズとMLBのトロントブルージェイズが「まあ、ニューヨークから近いから仕方なく入れてやるよ。」とガキ大将に”おみそ的存在”で入れてもらっている程度。
しかし、NHLはちょっと様相が違う。
このリーグ、頂点に立った者にはスタンレーカップが与えられる。このカップ、19世紀の終わりに、3度の飯よりアイスホッケーが好きだったスタンレー卿とかいうカナダ総督のおっちゃんが最初に寄贈したからこの名前になったらしい。ということは、カナダのスポーツじゃん!やるじゃん、スタンレーおじさん。ということで、NHLに興味を持ち始めた。
以前、サッカーをやってたということもあって攻撃と守備が瞬時に入れ替わる競技は基本的には好きだ。
とりあえず、テレビ中継を見てみる。
・・・うぉーーー!おもしれーじゃねえかーーー!
スケートだからサッカーやバスケのように走ってる競技よりもスピーディーで、しかもあんなちっちゃいパックが入りそうで入らない。
そしてなによりも『氷上の格闘技』と言われるだけあって、選手同士のぶつかり合いや、時にはけんかまで。この競技、選手同士の殴り合いが始まると、試合を中断してみんなでけんか観戦になる。審判も選手もベンチの連中も観客も。どっちかが膝をつくまで殴り合わせる。血沸き肉踊るとは正にこの状態。
観たい、生で観たい・・・いや、絶対見てやる!ということでネットで調べる。
昨シーズンのNHLは労使交渉が決裂。シーズン丸ごとストライキという事態に陥ったため、今年は2年ぶりのシーズンとなる。チームは全部で30。西3つ、東3つの計6つのカンファレンスに分かれており、西の王者と東の王者がおじさんのカップを取り合いっこするらしい。その中でカナダのチームは6チーム。
当然俺の住んでいるバンクーバーにもチームがある。”バンクーバーカナックス”である。
このカナックス、強い。
11月5日時点で12試合を終え、10勝2敗。2位に勝ち点5の差をつけカンファレンス首位に立っている。しかもカナックスのホッケースタジアムは俺のアパートメントから歩いて約20分。
さっそく公式サイトでチケットを調べる。が、なんと3月分までのホームゲームのチケットがほとんど売り切れ。カナダ人て他にやることないんか?
しかしこんなことで諦める俺ではない。
とりあえずダメモトで近くのチケットセンターに行ってみたが、3月分まで売り切れと言われた。そりゃそうだ、公式サイトでそうやって書いてあったんだから。
そこでホッケーのチケットについての情報を集め始めた。
ある日本人の友人に「J○Bがチケット確保しててそこで買ったよ。」と言われ、行ってみる。3月の125ドルのチケットしかない。・・・そんなに待てるか!
次にネットで色んなカナダ人が個人売買してるサイトを見つけ、調べてみる。いっぱいあるが高い。公式サイトに載ってる額の2倍から3倍。バカバカしい。
そんな折、あるカナダ人の友人にその話をすると、「そんなのとりあえずスタジアムに行って、その周りで売ってる奴らから買うんだよ。」と言われた。つまり日本で言うダフ屋である。なるほど。
11月に入り、気温は5度、土砂降りの雨の中をとりあえずスタジアムに行く。
試合開始後に買えば、定価かもしくはそれ以下で買えるかもしれないとは思ったが、初めてで勝手が分からないのでとりあえず試合開始10分前ぐらいに行ってみる。入り口はちゃんと(?)チケットを持ってる人たちでごった返している。
そんな中、人を掻き分け、ダフ屋を探しながら歩くと前方からこの土砂降りの中傘もささずに走ってくる仕事熱心なダフ屋のにいちゃんを発見。
ダフ屋 「ヘイ、ユーガイズ、チケット持ってっか?」
俺 「いくら?」
ダフ屋 「2階席だけどカナックスが攻めるゴール裏のがあるぜ。50ドルでどうだ?」
俺 「もうちょっと安くなんない?」
ダフ屋 「じゃあ45ドル。」
友人A 「40ドル。」
ダフ屋「OK!」
ということでその場で現金を払い、もらったチケットの定価を見ると、30ドルだった。まあ、試合開始前から入れるから良しとしよう。
入場してすぐにビールを買いに行く。
前述したが、カナダは酒には厳しく、俺はカナダ人が認識できるIDを持ち歩いてない。言われちまった。「ID見せろ。」
森本レオばりの柔和なスマイルで必殺の『平成18年の誕生日まで有効』の免許を取り出す。が、さすがにここはその辺の酒屋とは違った。
後ろにいっぱい人が並んでるし、試合は始まりそうだし・・・。ということで、その場は諦め、後でIDを持ってた友人に買ってもらったのだった。
日頃の行いは大したことを行わない俺だが、なんとラッキーなことにこの日の試合は物凄く白熱の展開。
2対1、カナックス1点リードでむかえた最終ピリオド残り3分弱。カナックスの選手が2人、立て続けにペナルティを取られる。
アイスホッケーはキーパーを除いて5人ずつだが、誰かがペナルティを受けると2分間その選手を除いた人数で戦わなければならない。これをパワープレイと言う。
この場合、残り3分弱で立て続けに2人ペナルティを受けたということは、残り時間のほとんどを、相手が5人なのに対してカナックスは3人で戦わなければならないことになる。いじめだ。
このいじめの状態に入ると、人数の少ないほうは攻めるのを諦めて、とにかく全員でゴールを死守する。
そこに、人数の多いほうが「これでもか!」とばかりにシュートの雨あられをあびせる。いじめ以外の何ものでもない。
ペナルティを受けた瞬間は、1万8千人の観客も大ブーイング(もちろん審判に対して)だったが、その後は1万8千人で 「Go Canucks go!」の大合唱。相手、ミネソタワイルドのとってもワイルドないじめに屈することなく試合終了をむかえた。
これだけ叫んで、これだけ手を叩いたのはおそらく3歳の七五三以来だろう。これで40ドルは安い。癖になりそうだ。
次は試合開始直後にチケット買って、定価以下で観るということに挑戦してみよ。
