

ホーチミン、タン・ソン・ニャット空港を出ると大勢のバイクタクシー運転手に囲まれた。・・・えらい歓迎ムードだ。
全ての歓迎を振り切って、ちょっと離れたところに佇んでいた人の良さそうなタクシードライバーに声をかけ、安宿街へ。
シングルルームはタイに比べてちょっと高めだが、ドミトリーは埋まってたので仕方なくチェックイン。
荷物を置いて街を散策しようと階段を下りていくと丁度到着したばかりの日本人大学生がレセプションにいた。
ドミトリーは埋まってるのでツインをシェアしようと持ちかけ、すぐさま部屋を変更。すっかり貧乏旅行が肌に染み付いてしまった。
大学生S君と街を練り歩き、夜は山羊鍋なるものを堪能し、翌日ミトーというホーチミンから日帰りで行ける村に行く。
バスで港まで行き、メコン川をフェリーで渡る。フェリーを降りたところでバイクタクシーを捕まえ、ミトーの中心部へ行くよう頼み、料金を交渉する。
バイクの後ろに俺とS君2人、つまり3人乗りで15000ドン(約100円)ということで話がついた。
目的地に着き15000ドンを払うと運転手が「もう15000ドンだ」と言う。
「いやいやいや、2人分で15000て言いましたやん。」と最初は笑顔だったのだが、相手がどうにも引かない。
15000ドンはたかだか100円なのだが、現地の貨幣価値が染み付いてしまってる俺にとって15000ドンは15000ドンであり、100円ではないのである。そして何より約束と違うことに納得がいかず、言ったの言わないのと15分ぐらい問答していたらそばにいたベトナム人が仲介人よろしく出てきて、「じゃあ25000ドンでどうだ?」と言う。
いやいや、お前さん誰だか知らんが何でそうなるんだ?とそこから更に15分ほどやり合い、結局あと5000ドンを握らせて合計20000ドンで決着をみた。むかつく。
大して見所もない村をブラブラ歩いてその辺の木陰で涼んでいたバイクタクシーを捕まえフェリー乗り場まで行くことに。
バイクの後部シートに跨り、来た道を戻る。前方にフェリー乗り場が見えたその時、フイとバイクが左折した。
舗装もされてない細道である。両脇にボロボロの民家があり、バイクがスピードを落とすと裸足の子供たちが寄ってきた。
「おいおい、どこへ連れてかれるんだ」と不安になるが、バイクは速度を緩めながらも走っている。
そのうち前方にメコン川が見えてきた。
そしてその土手には、トム・ソーヤかと思わせる木でできたいかだのような舟が。
「・・・まさか」という思いは現実になり、バイクを止めた運転手は「フェリーだ」とぬけしゃあしゃあとぬかす。
もううんざりである。とりあえずバイク代の20000ドンを手に握らせ、S君とともに本物のフェリー乗り場へ徒歩で辿り着いたのであった。
宿に戻るとベトナム人の若者が細切れにした色紙を頭から掛け合ってはしゃいでいる。これがベトナム式のクリスマスパーティーらしい。
あまりに楽しそうだったので参加してめちゃめちゃに楽しんだ。そうだ、もう年末なんだなぁ。
翌日、帰国するS君と別れ、一人列車でフエに向かう。共産主義国であるベトナムには列車などの公共機関に外国人料金なるものがあり、ベトナム人より高い。
それでもツーリストバスで観光客に囲まれながらよりは普通の列車でベトナム人に囲まれながら移動したいと思い、列車の切符を購入した。
有名なダナン〜フエ間の景色は絶景だったが、どうにも雲行きが怪しい。
どうやらこの時期のベトナム中部は雨期らしい。
フエに到着すると完全に土砂降りであった。しかも寒い。
毎日雨でろくに観光する気も起きず、たまたまゲストハウスでツインをシェアすることになったアルゼンチン人のイワンとともにビリヤードをやったりして過ごした。
ある夜、イワンがフランスパンを買って宿に戻ってきた。
何をするのかと見ているとおもむろにバックパックから皿を取り出した。それに続いてナイフ、ビニールに入った10個ぐらいのトマト、スライスハム、塩、胡椒、オリーブオイル、バルサミコ・・・次から次へと出てくる出てくる。
フランスパンにナイフで切れ目を入れ、皿の上で器用にトマトを切り、調味料を適度に混ぜてハムとともに挟んで俺によこす。「うん、うまい!」・・・でもよくそんなもん持って旅するなぁ。
雨がやまず、ベトナムという国に嫌気が差しはじめ、イワンもそろそろホーチミンへ行くというので俺もハノイに移動することにした。今度は夜行列車である。しかも寝台車の外国人料金は高いのでソフトシートで。
明け方5時頃到着。暗くて寒い中を駅から安宿のほうへ向かって歩いているとバイクタクシーが併走してきた。
「チープホテル」と言ってる。「いらない」と言って歩き続けるが、その横をずっと併走しながら「チープホテル」と連呼する。
あまりにしつこいので手で追い払う仕草をしたら「fuck you」という今の俺にとって一番のNGワードを言いやがった。
プチン!とこの旅で初めてマジで切れた。
バイクごと蹴り倒してボコボコにしてやろうと思い近づいていったら、猛スピードで逃げて行った。
旅に出て一ヶ月がたち、ベトナムに入ってからほとんど雨で精神的にも肉体的にも疲労がピークであった。
とりあえず、ハノイで冷凍保存されてるホーチミンさんに会って、さっさとフエに戻り、バスでラオスのサバナケットに向かったのであった。

